いよいよ受験シーズンとなりました。大学入試センター試験まで1カ月、今まで頑張ってきた人も、後れをとっていた人も、みな一番勉強に集中し、そして学力が伸びる時期です。「落ちるかもしれない」というプレッシャーの中、自分のすべての力を勉強に向けて、頑張る。この苦しくも充実した時期を体験できる受験生は幸せです。たった数カ月の経験にすぎないかもしれませんが、この間に覚えたこと、考えたこと、感じたことは、その後の人生の様々な場面で、必ず役に立つ時が来ます。
私の高校時代は、吹奏楽の部活に明け暮れた3年間でした。高3の最後のコンクールが終わり、受験勉強をようやく本気ではじめたのは10月終わり頃でした。指定校推薦で上智大学への推薦入試を受けることになり、12月には受験勉強を終え、好きな本でも読もうかと考えていました。結果は予想もしなかった不合格。指定校推薦で不合格とは、担任だった佐藤先生(前真岡市教育長)も驚かれていました。相当不出来だったのだと思います。12月からは、死に物狂いの受験勉強を再開しました。結果は、国公立大学二つに合格できたものの、私立は受けた6校すべてが不合格。どうしても東京に行きたかった私は、浪人することを決めました。
とにかくも、この時期、とくに12月から2月28日の早稲田大学第一文学部の試験までは、これ以上ないくらいに勉強しました。3月1日の卒業式に間に合うように真岡に戻ってきましたが、勉強癖がついて卒業式に集中できなかったのを覚えています。この時期の勉強量と集中度は、いまでも何かの仕事や勉強をするときの「目安」になっています。「これくらいならまだまだ頑張れるな」など、自分の知的体力が実感として分かるようになりました。
たった3ヶ月で何とか必要な知識をつけようと、あせりながらも工夫し集中して取り組んだことによって、その後の勉強法のひな形が確立できました。その間に読んだ現代文や英文、論文試験のために読んだ本によって、学問の魅力も分かるようになりました。外面的には自伝に書くような出来事は一つも起きませんでしたが、内面的には劇的な変化と成長を経験できたのです。これらは、とても大きな収穫でした。
さて、多くの方々に支えられながら、私たちのアカデミーが開校して今月で9ヵ月になりました。アカデミーでの勉強は他と違わず地味なルーティンでしたが、この9ヵ月は、周囲の人々の見た目には決して分からない大きな変化が起こりました。渦中にいるときは気がつかないが、20年を過ぎたころ振り返ると、線となって繋がっているのがわかるような、そんな地味で劇的な変化です。「生きる力」とか何とか、抽象的なスローガンが叫ばれている昨今の教育界ですが、こんな地味で目立たない経験が、力になりうることをみなが思い出すべきだと思うのです。少なくとも、私たち講師一同は、そのような力の獲得をお土産にしてもらえるよう、真剣に教えています。
新年も、生徒の貴重な体験をご支援くださりますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
エコール麹町メディカル塾長
原田 広幸